そんな印象に残るような出会いでなかったせいもありカラオケ店の社員さんの事など全く頭になかった私。というか…例えどんな運命的な出会いをしてたとしても何とも思わなかっただろう。理由は簡単、私には既に好きな人がいたからだ。
「疲れたぁー!(泣)今日も全然寝る時間なかったよ〜。なのにココ終わったらまた向こうあるしぃ〜」
「そうか、そんなにジュースが飲みたいのか(笑)なら帰りにでも奢ろうかな」
「いやいやそんな事言ってないし(笑)まぁ奢ってくれるなら嬉しいけど(笑)」
「え、でも俺のだよ?」
「ムカッー!あっそ!なら強制的にゴチになるから良いし!」
「嘘だよ。
それ飲んで頑張りな」
そう優しく微笑んだこの人が私の想い人。鈴木翔27歳。大人しいお兄さんって感じの見た目とは裏腹に意外とお茶目で何よりこの優しい所が大好きだった。
だが翔には半年前にとっくに振られてる。半年前の雨の日。“話しがあるから”と残業していた翔を待っていた私を翔は車で送って行ってくれた。その時に言ったのだ。「好きです」と。
自分から告白なんて初めての事で…すごい手が震えた。心臓が壊れるんじゃないかってくらいドキドキした。それでも一生懸命伝えた。知って欲しくて。とにかく私の気持ちを貴方に知って欲しくて。
けれど返事は「ごめんね…岡崎さんは妹みたい存在なんだ…」。
そう振られた。
最初から分かっていた。貴方が私を何とも思ってない事くらい。
分かっていたけど振られた当時はすごいショックだった。でも告白した事を後悔はしなかったし、むしろ良かったと思う。
あの告白以来、私と翔の関係はどんどん縮まっていったからだ。
毎日メールくれるようになったし、職場でもマメに話し掛けてくれたり、月1ペースで2人で映画やショッピングしたりもしたし、下の名前で呼び合うようにもなった。