「何ですか?今の音…?」
「船越さん!9号室のお客さんが酔ってドア壊しちゃったみたいなんです!」
「……分かりました。私が行きます。岡崎さんはココにいてください。」

そう指示して船越さんは早速9号室に向かっていった。当たり前だが私は初めての事で軽くパニック状態だった。酔ってガラス割ったって事はその人かなり荒れてるんだよね?そんな所に行って危険じゃ…船越さん大丈夫かなぁ…。
そんな心配事をよそに船越さんは直ぐに戻って来た。

「船越さん!
一体なんだったんですか?」
「男女関係の言い争いで男の人がキレてドア壊したみたいです。ガラスの破片が散らばって危ないので近寄らないで下さいね。」
「わ、私に出来ることは?」
「ここでいつも通りのオーダー受けたり会計したりして下さい」
「は…はい…」

そう言うと船越さんはコール用の受話器ではなく普通の電話の受話器を掴んだ。こういう時は必ずマネージャーや上の人に電話するのがルールみたいなものだったので、電話しているらしい。
その後も船越さんはテキパキとガラスを綺麗に片付けたり、ドアのガラスを壊したお客さんには勿論弁償してもらわないといけないのでその件で話し合ったりしていた。

ガラスを割った事で酔いがさめたのか荒れてた人は既に大人しくしていたし、連れのギャルな女の子達は罰の悪そうな面持ちをしていた。私はそんな光景をチラチラと見ながら普段通りの仕事をしていただけ。こんな時にあんな風に対応しなくちゃいけないんだなぁ…と思う。同じ女の人なのに冷静で度胸のある船越さんがカッコよく思えた。