するとその時、船越さんと伊藤さんの会話の一部が聞こえてきた。
「今回の社員も駄目なんじゃないのぉ〜!」
「………」
そうだ…と私は来月から社員さんが異動してくる事を思い出した。普通、社員は1店舗に1人居て店長や副店長みたいな役割でお店を管理するのだ。けれどこの店舗には今1人も社員はいなく、たまにしか顔出さないマネージャーが店長代理をしている。
それで来月から社員が異動してこの店舗のリーダーとなるはずなんだけど…ベテラン人が言うには前にも何人か入れ代わりで社員がいたらしいけど、どいつもこいつも役に立たない奴らばかりだったらしい。
私もそんな話しを耳にしていたものだから「社員=良い人」のイメージがあまりなかった。むしろ“怖そう”とか“厳しそう”とかそんなイメージをばかりでシフト被らなければいいなぁとかそう思ってた。
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そして12月。私はまだ例の社員さんとは面識がなく、この日もシフトは被らなかった。お客さんもまだ12月頭なので少ない方。
でも飲み放題のお客さんが何組かいたので厨房を離れられず、厨房で出来る限りの閉店作業などをしていてた時のことだった。
――――ガシャーーン!!
突然ガラスが割れたような音が一階の奥の部屋から聞こえてきた。
な、なんなの!?
驚いて急いで音がした方向へ向かおうとする…けどコール鳴り響いたため私は足を止めた。コールを優先的に出なさいと教えられていたので取り敢えず電話に出た。
コールは飲み物や食べ物のオーダーを主にデンモクやマイクがつかない等の内容が殆ど。だから今回もそうだと思ったのだが予想外の内容だった。
「はいフロントです」
「すいません!!ツレが酔った勢いでドア壊しちゃいました!!」
「え!?じゃあさっきの音…、わ、分かりました!とにかく直ぐに行きますね!」
そう言って電話を切ったその直後、二階でモップ掛けをしていた船越さんが厨房に現れた。音がしたから降りてきたのであろう。怪訝そうな顔をしている。