オレの右腕を掴んでいたサエは
一緒に来た友達に引きずられるように
駅に向かって行った。

三々五々散っていく仲間たちをみながら
ふとキミを見る。

「もう終電だよ?」

「うん私は大丈夫。
それより隼人くんこそ急いで!」

って言われてもなぁ…
なにせ不規則な音楽活動で食ってる身としては、
終電とか関係ないんだよね。

「というか陽こそ大丈夫?」

「あ、私はこの間会社辞めたし、
ここから一駅だから歩けるし平気」

そういってオレをみた顔がたまらなくて
つい、キミの細い手首を掴んで、
終電めがけて行く人々に逆らって歩きだした。

「じゃあマサにお願いされちゃったし、
もう一回どこかで飲み直す?」

なんて、わざとらしいなオレ。
本日三回目の苦笑い。

キミの「帰るよ」の言葉を
期待してたのに

いや

うそだな

期待通りにキミが

「うん」

て。

でも、と何か言いかけたキミの声に
聞こえないフリして
とりあえずその辺の店に入る。