両親と姉は神妙にテレビのドキュメンタリー
を見ている。

「香陽!」

「ちょっと今いいところ。
しっ!」

と姉は半泣きで人差し指を立てる。

ごめんと小さく言って、
ダイニングの椅子に座る。

テレビの内容は、
出産の時に母親が死んでしまい、
産まれた子供を、残された父親が
育てていくノンフィクションらしい。

母親は既に鳴咽している。

リビングとダイニングの明らかな温度差を
感じながら、見るともなしに見ている
とやがて番組は終わった。
エンドロールが終わりオレは言う。


「香陽、ピアノやる。」


ティッシュで鼻を噛みながら
姉が振り向く。

「ほんど?あでぃがど」

ありがとうはこっちの台詞。

泣いていた母親も顔をあげる。

「隼人、もう出世?
ママも何か買ってもらわなきゃ」

今さっきまで泣いてたのに現金だな。

でもこんな温かい家族がどんなにか
大切かということにオレは後々、
痛いほど気付かされる。