これは私達に『ある事』が起こる数日前の出来事である……――― その日、私はいつもどうりに家を出て、いつもどうりに学校について、自分の席に座った。 なのにどこか変な気がした。自分はいつもどうりなのに周りがおかしい。妙に静かだった。いつもなら騒いでいる男子も今日は静かに席についていた。女子も静かに席についていた。隣のクラスも静かだった。それに、いつもはジャージのあいつが今日はきちんとスーツを着ていた。後で龍に聞いてみると『今日は変過ぎねぇか?』とも言っていた。
何故、みんなの様子がおかしかったのかはシカ達に相談してやっと分かった。

「たぶんそれは『驚不』よ」

「『驚不』…」

驚不。それは術府の一種で使えるのは隊長格の一部の人しか使えないもの。この技をあびた者は記憶も思考も何もかもが『無』になる。術府を使った者からして、そのあびた者はただの『道具、操り人形』となる。これが原因で隊長格の人達も使わないように言われている恐ろしい術府である。
「でもなんで今?」

私はシカに聞いた。すると、シカはしばらく考えて私に言った。

「分からない…あんた達に効かないって事は…もしかしたら亜美の目の力を奪う為に人間を操っているかも…」

私の目の力を奪う為…そう考えるとそこまで目の力に執念がある人じゃないとやろうとはしないはず…
…待て?なんで今日は何もなかった?何故?

時間にして午後8時前後。学校から大きな物音が響いてきた。