こういうパーティーの難点は、華やかなパーティードレスの女性と違って、男は同じような格好で見分けがつかない事だ。

だが、彼はすぐに分かった。


「柚月さん、ですね? 見事なパーティーだ」

「お褒めに預かり光栄だ。こちらこそ、多額の寄付にお礼を言うよ」


このパーティーの主催者、柚月一星。

年齢はおろか、性別さえも定かではない謎の多い大富豪だ。


不本意だったが、志鶴を紹介しないわけにもいかない。

自分でもぶっきらぼうな口調だとは思ったが、まあこのくらいなら無礼という程でもないだろう。

志鶴は僕の陰に隠れるようにして、でも礼儀正しく挨拶をした。


「ずいぶんと可愛らしい婚約者さんだね」

柚月が言った。


悪いか


「君も恋人の前では笑うんだな。いつもの君の方が、仮面をつけているようだよ。無表情でね」


仏頂面って事だろ?


「仲がいいようで安心したよ」

柚月は意味ありげに微笑んだ。

「君が現れないから、気になっていたんだ。こういう女性を放っておいては駄目だよ。いかにも騙されそうだ」


特に僕にね