「ちゃんと圭吾さんに話すのよ」

亜由美ちゃんは手を振ると、仮面をつけた人波の間に紛れて行った。


「僕に話すって、何を?」


志鶴はちょっとためらってから口を開いた。

「あのね、結婚式が近くなってきて心配になったの」


何が?


「わたし、もうすぐ二十歳でしょ?」


そうだね。僕はそれを待っているんだよ。

君のお父さんが、二十歳前には絶対に嫁がせないって言うから。


「大人になっちゃうなって思って」


急かすなよ、圭吾


僕は黙って志鶴の話を聞こうとした。


「圭吾さんは、わたしの子供っぽいところが好きって、いつも言うでしょ? わたしが大人になっても好きでいてくれる?」


「もちろん」

僕はうなずいた。


「よかった」

志鶴はホッと吐息をついた。