「ほら、志鶴。圭吾さんよ」

志鶴の友達の亜由美ちゃんが、宥めるように言った。


「圭吾さん?」

半ベソをかきながら、志鶴が僕に向かって手を差し延べた。


志鶴をそっと抱きしめると、彼女の心が垣間見えた。

幼子のように純粋な信頼と愛情が、僕を包み込む。


志鶴は僕を愛している。

ずっと変わらぬ心で愛している。


心変わりをしたのでなければ、彼女の心を曇らせているのは一体何だ?


「後は志鶴を預けちゃっていいのかしら?」

亜由美ちゃんが言った。


「楽しんでいた所を邪魔してしまったね」


「夜は長い事だし、別の楽しみがすぐ見つかるわ。こんなすごい所へはそうそう来られないもの」

クールに肩をすくめる彼女は大人びていて、とても志鶴と同い年とは思えない。

「行方不明の美幸を探さなきゃ。じゃあまたね、志鶴」


「付き合ってくれてありがとう」

志鶴が僕の腕の中で振り向いて言った。


ホールの暗闇は、いつの間にかミラーボールに照り返す色とりどりの光で輝いていた。