日差しが暖かい。

ふと信号待ちをしていた紘哉の目の前を、二人の女性が通り過ぎた。

「……ねぇ、知ってる?
また探偵界に新しい『異名』を持つ人が増えたんだって!」

「え?何ソレ?」

「その人の名前は『ひろや』って言うらしいの。
で、異名はね……」

信号が青になり、とおりゃんせの音楽が流れる。
彼はチラッと横を見て信号を渡る。

肝心のところが聞けなかった。

そう思いながら、紘哉は三雲探偵事務所のドアを開けた。