ピンと背筋を伸ばし、ゆっくりと弦を引く。
周りの音は、何も聞こえない。
何も見えない。
あるのは、まっすぐ前にある的だけ。
狙い定め、指を離す…!!
ドォン!
私が放った矢は的の中心へと当たり、ようやく張り詰めた息を吐き出す。
その途端、今まで静寂だった私の世界は音を取り戻した。
「…すごい!さすがは紫乃さま!!皆中よ!」
「やっぱり弓道部のエースは雰囲気からして違うわよね。」
私を遠巻きに眺めていた、女子部員たちは揃って溜め息を漏らした。
これもいつものこと。
見慣れたものだ。
「紫乃さま、この前の中間考査も1位だったらしいわ。」
「すごいわよね。成績優秀で、弓道は全国レベル。おまけに容姿端麗。非の打ち所もないわ。」
そんな女子たちの会話には聞こえないフリをし、もう一度弦を引く。
意識を集中すれば、周りの雑音は一切聞こえなくなる。
集中して、狙いを定め、指を離…!!