一発殴ってやろうか、なんて考えて、気がついた。
ただの生徒一人のためだけに、一緒に寝てくれたんだ。
普通、迷惑だから押しのけてもいいはずなのに。
……そんなに……悪い先生じゃ、ないのかな……。
複雑な思いのまま、朝ごはんを食べて、先生の車で少し早く学校へ行った。
学校につき、中庭で先生と別れてから、朝の早い時間に教室に入る。
誰もいないと思っていたら、一人予想外の人物がいた。
「アキラ?」
「……はよ」
「おはよ」
……?
なんか、様子がヘン?
いつもウザイくらい笑ってるアキラが、珍しくムッとした顔をしている。
なんとなく気まずい沈黙がつづき、耐えられなくなったあたしは、
「あ、教科書わすれちゃった~!いったん寮に帰るね」
とわざとらしく言って出ていこうとした。
が、それはできなかった。
「……あ、アキラ…?」
アキラが、怖いくらい無表情な顔で、あたしの腕を掴んでいた。
「待てよ」
「…っわ、わかったよ、待つけど……放して!痛い!」
あまりの力強さに、叫ぶような調子で言ってしまった。
はっと我にかえったように、アキラが手を放す。
「で……何?」
「……昨日」
「どこに、いたんだ?」
さっと血の気がひくのがわかった。
そうだ。幼なじみのアキラは、あたしの家庭事情を知っていた。
あたしがどんなにあの家が嫌いか、知っているんだった。
「百合に聞いた。寮に帰れなかったって。でも、お前は絶対家に帰らないだろ。
じゃあ、どこにいたんだ?」
「そ、れは」
言えない。
言ったら、先生に迷惑かかる。
どうしよう。