「次の授業、なんだっけ?」

親友の百合にたずねると、「体育」という短い返事がかえってきた。

「体育かー…」

「あれ、美羽、体育苦手だったっけ?」

「うん、超苦手」
しかも今日は、よりにもよってバスケだ。一番苦手なスポーツ。
おまけに、この桜宮高校では、体育はなぜか男女合同となっている。意味わかんない。
体操服片手にため息をついていると、突然背後から頭を叩かれた。

「痛った!?」

バッと後ろを振り向くと、そこにいたのはクラスメイトであり幼なじみの、一ノ瀬アキラだった。
短い黒髪に、少し吊り目の瞳、全体的に整った顔立ち。
小さい頃から仲がいいからよくわかんないけど、最近じゃ女子から結構人気があるらしい。

「ア~キ~ラ~」

叩かれた後頭部を抑えながらにらみつけると、

「この位よけろよっ」

と言いながらニヤリと笑う。
高校生にもなって恥ずかしいと思うけど、その一言にムッときたあたしは、無言でアキラの頭を叩きかえした。

「いてっ」

「これでお互いサマです~!」

そんなカンジで騒ぎながら、体育館へと急ぐ。


いつもとなんら変わらない、

ただの「日常」だった。