先生の家につくまでの車の中、先生は何も言わす、黙って運転していた。
あたしも黙って、スカートを握りしめ、座席でちいさくなっていた。
窓の外の景色が、どんどん変わっていく。
やがて着いたのは、隣町の海に近いマンションの6階。
夜の7時なのに、人通りは少なく、先生は慣れた手つきでカギを開け、あたしを中に入れた。
「散らかってますが」
「……や、別に……気にしません」
「…ご飯は何にしましょうか?」
「……何でもいい…です」
先生は散らかっていると言ったけど、部屋はそれ程散らかってはいなかった。
というよりは、全体的に物が少ない。
テレビ、テーブル、ソファー……くらいで、あとは医療関係の本や、映画のDVDが置いてあるくらいだ。
しばらくして、先生が、熱いお茶とグラタンを持って現れた。
「すみません、レトルトなんですが」
「別に……」
小さなテーブルに向かい合わせで座り、いただきます、と手をあわせる。
………。
……………。
……なんか、急にドキドキしてきたっ!!?
そ、そういえば、二人っきりだし、……先生の、家……だし……!!
あああああ、今さらなのはわかってるんだけど、でも、でもーー。
ーーどう考えたって、落ち着ける状況じゃない!!
頭がパニック状態になるのを必死で正常にしようとするんだけど、
ーー添い寝もしてあげますよ?
冗談っぽい笑みと一緒にフラッショバックしたあの言葉が、頭に焼き付いて離れない。
どうしよう、どうしよう。
と、先生が突然、クスッと笑った。
「何もしないから、大丈夫だよ?」
ふいをつかれたあたしは、ものすごく慌てた。
「えっ、あっーーって、」
あれ?
今。