先 生 。
「……なるせ、せんせい…?」
「やっぱり日々野さんですか。こんなところで何してるんですか?」
「………別、に」
ヤバい。
声が、震える。
泣いてたのはバレてないみたいだけど、あたし、うまく喋れてるかな。
一方、いつもと変わらない先生は、「忘れ物しちゃいましてねー」と軽い感じで言う。
「ところで日々野さん、」
「な、なに?」
「どうして寮にいないんですか?門限は過ぎたと思うんですが」
「……あ、その」
とりあえず、携帯を無くして、それを探しに来たら門限を過ぎてしまったことを説明する。
「それは大変ですね。……あ、そうだ、僕の家はどうです?添い寝してあげますよ」
へらっと笑いながら、冗談ぽく言う。
きっとあたしが、何言ってんの変態教師!って言うことを期待していたんだろう。
あたしだって、いつもならそう言っていた。
……けど今は、本当に困っていて、
お母さんのこととか思いだして、
もうぐちゃぐちゃで
辛くて、悲しくて、
……どうしようもなく弱っていて……。
「……いいよ」
先生が目を見張る。
「先生の家に泊めて」
そう、言っていた。