百合がなんでもないことのように言う。

「先生の名前、分かったの?今日、いろんな人に聞いてたじゃん」

……確かに、なんとなく気になって、男子とかにも聞きまわったけど。

「……わかってない」

「聞けばいいじゃん、本人に」

「…別に、そんな気になるわけじゃないし」

素っ気なくつぶやくと、「ホントは気になってるくせに」と言われた。

「そんなことないっ。成瀬先生なんてどーでもいいし」

「ふーん?でもイケメンじゃない?」

「…顔はね」

「性格も優しそ~だし」

「どこがっ!」

ここは批判せざるを得なかった。

あの変態教師の、どこが優しそうなの!?

いや、パッと見は確かに優しそうかもしれないけど……全然優しくなんかない、本当は!

昼間っから生徒に平気でキスしたりするセクハラ教師なんだってば!!


……って、言いたい!

めちゃくちゃ言いたいのに、言えない~!!
(なぜならあたしもキスしたから)

あー、すっごくイライラするっ。


でも、ここで言って入学早々、退学やら停学やら、そうでなくても変に目立ったりはしたくないから、仕方なく黙り込む。

一方の百合は、不審そうにあたしの顔を覗き込んだ。