超有名人で、おまけにあんなに女子に人気なのに、誰も名前を知らないなんて変なの…。


そんなことをぼんやり考えながら、廊下を歩く。

今は、昼休み。
購買に行ってパンでも買ってこようかと、財布片手にふらふらしてたところだ。

と、声をかけられる。

「美羽ー」

「アキラ?何?」

「足、くじいたんだって?」

「ん、まあ。でも先生にテーピングしてもらったし、平気」

「ふーん…」

どうでもよさそうに言いながら、じろじろ見てくる。
顔になんかついてるのかな?

顔に手を伸ばして、ふとさっきのキスを思い出す。

あんまりびっくりしたからそんなにハッキリ覚えてないけど……なぜか先生の唇の感触だけははっきりと残っている。

あ~~~~もうっ!

なんだか変な気分になってきたっ!

これも全部あの先生のせいだ。

「…美羽どした?顔赤いけど」

「っ!?」

気づけば、頬は熱く火照っている。

「なんでもないっ!!」

ほぼ怒鳴りつけるように言うと、逃げるように購買へ向かった。


あんなキスなんかで、赤くなったりするわけない!


パン買って忘れよう…。

「……」

アキラの視線に、その時のあたしは気づかなかった。

アキラが、小さく舌打ちをしたことも。