――あたしと薫さんは、近くにあったベンチに並んで腰掛けて、遠く海の向こうを眺めながら話をした。


「久しぶりよね。あの日以来だものね」



薫さんは本題に入る前の前置きのように、他愛のないことを口にしてほほ笑んだ。


頷くあたしも一応は笑ってみせるけれど、いったい何の用なんだろうと内心は少し複雑だった。




「ネオとはもう、会ってないんですってね?」



話の核心に入るように、急にその名前を口にした薫さんに

あたしは目をそらしながらも、驚きを隠せずに肩をビクリと震わせた。


薫さんはそんなあたしを見据えて、またすぐに口を開いた。



「あの子に何度か会ってるの。その時に、あなたとは会ってないと聞いた。
それ以外は話してくれなかったけどね」



そう言って笑った薫さんは、少し悲しげに見えた。