悠貴との婚約が決まってから、遥と飲みに行く機会もずいぶんと減った気がする。


たぶん、遥も気を使ってくれてるんだ。


あたしと悠貴がちゃんと一緒になるまで、応援すると笑ってくれていたし。


それは嬉しいことだけれど、同時に苦しかった。


この心の奥に秘めたものを、遥にさえ言えなかったから……。



「花音、楽しみね」


無邪気に笑う遥とは裏腹に、あたしはなんだか気が引けてしまった。


それは、悠貴に対する引け目なんかじゃなくて。


違う何かを、この時あたしは予感していたんだ。



もう一度“ネオ”に会いにいくこと。


それが、運命の歯車を大きく狂わせるような

何か大きな扉を開けてしまうような


そんな予感がしていた。