あたしは悲しく歪みそうになる唇をキュッと結び、お線香をあげた。


そして、手を合わせて先生を想った。



高校生のころから、ずっと憧れていた人。


あなたがいたから、あたしはピアノをやめなかったんだ。


あなたに少しでも近づきたくて、同じ大学に入ったんだ。



あたしの気持ちも、きっと気付いてたよね?


それほどに、真っ直ぐにあなたを追いかけてた。


光の溢れる世界で、眩しいほどに輝くあなたがとても好きだった。



だけどね……先生。


あたし、好きな人ができたんだ。


先生と同じくらい、大切にしたいと思えた人なんだ。