「永都が素晴らしいピアニストとしての才覚を神に与えられたように、その死も変えようのないあの子の運命だったんだと思うの。あなたと約束してなかったとしても、きっとあれがあの子の寿命だったんだと思う。そう思うことが一番よ。そう思わなければ、残された人は生きてはゆけない。

だからもう泣かないでね。あなたがこうしていくら懺悔をしたところで、あの子はもう戻ってはこないんだから。そんなことよりも、あの子のぶんまで幸せに生きてほしいわ。あなたに幸せになってほしいと、きっと永都も望んでいるわ」



「薫さん……」



また、涙が込み上げてくる。



本当はとても怖かった。


永都先生の家族は、許してくれないと思ってた。

きっと責められるって思ってた。



すごく怖くて、そして自分を自分で責めてた。