「花音さん、あなたのことは永都からよく聞いていたわ」


予想もしない言葉に、思わず顔を上げた。


「永都ね、教え子で花音って素敵な名前の子がいるんだって言ってたから。私もあなたの名前が印象的だったからよく覚えてるわ」


薫さんはそう言って、優しくほほ笑んだ。


「ほら、パッヘルベルのカノン。あの曲がとても似合ってる花のような可憐な子だって言ってた」


「永都先生が、そんなことを…?」


そんな、まさか……


お姉さんに、あたしの話をしていたなんて。


「あの子、あなたのことが好きだったんじゃないかな。だって姉の私にまでそんなことを楽しそうに話してたし。あなたの名前を聞く日が多かった」