「はぁ……」


ここへ来たものの、足が小刻みに震えているのがわかる。


手をあげても、インターホンを押すのを躊躇してしまう。



あの日から動かないままの時計を、動かす時が来た。



永都先生に今度こそサヨナラをするんだ。


ネオと一緒に未来を歩いていくために……。




そう心に決めて、インターホンに手を伸ばしたその瞬間だった。




「あの、うちに何か?」


ふいにかけられた声に、ハッと振り返ると


そこにいたのは……



色素の薄い、真っ直ぐな茶色い髪と

切れ長の目が印象的な、とても美しい女の人だった。