「花音」


囁くような優しい声が降ってきたかと思うと


ネオはあたしが座るイスの右半分に腰掛け、両腕であたしの体を挟むようにして鍵盤に手を置いた。



ふわりと匂った甘い香水の香りと、ネオの吐息。


右を向けばネオの顔がすぐそばにあって、あたしは思わずビクリと肩を震わせた。



「花音、細いんだね」


ネオは長い両手ですっぽりあたしの体を挟み、鍵盤に手を悠々と置いている。


あまりの至近距離にうろたえるあたしを、わかっているのか意地悪な笑みを浮かべるネオ。


近くで見ればみるほどに、綺麗な顔立ち。

本当に、先生と瓜二つだった。



「ネオ……」


高鳴っていく心臓の音が、聞こえちゃいそうで。


あたしは恥ずかしさのあまり、思わず俯いた。