「花音、ピアノ弾けるの?」

「えっ……う、うん。音大に通ってたときがあって。あ、でも中退だけどね」


恥ずかしげに言ったあたしに、ネオはフッと微笑んで立ち上がった。



「弾いてみてよ。花音のピアノが聴きたくなった」



佇んだままのあたしに、ネオは少しづつ近づいてくる。



「えっ……で、でもあたし、最近はもう全然弾いてないし……」


拒むように後ずさりするあたしを、ネオはそれでもあきらめずにつかまえようとする。


「いいから。おいでよ」


そう言って、ネオはとうとうあたしの腕を掴んだ。



「す、少しだけなら……」


涼しげな顔をして、時々強引さを見せるネオ。


そんな強い眼差しに、あたしはしぶしぶピアノに向かった。