歯の浮くような甘い言葉。

どうしてそんなセリフをサラッと言えちゃうんだろう。


独特なネオの雰囲気に、いつも胸が高鳴ってしまう。



胸を押さえるあたしをよそに、ネオはひと呼吸おいてから、メロディーを奏でだした。



「あっ、これは……」


“ラ・カンパネラ”


ネオとあの船上で出会ったとき、あたしがリクエストした曲だ。



重厚で悲しげな音階。


ネオはその音色に合わせるかのように、切なげな表情をした。



「花音」


ネオは急に弾くのをやめて、その甘い声であたしの名前を呼んだ。


ネオの視線は、無意識に膝の上で動いていたあたしの指に向けられている。