頭の中が真っ白になるって、こういうことを言うんだろうか。


身動きひとつできないで、長い時間ただ呆然と立ち尽くしていた。



一目見たときから、あたしは永都先生が好きだった。


ピアノを弾いていた先生に、一目ぼれした。



耳を覆い隠す、茶色くてサラサラの髪も

全て見透かすような切れ長で鋭い目も

あたしの名を呼ぶ優しい声も


美しい音色を奏でる綺麗な指先も




すべて、好きだった……。



まだ、何もはじまってもいない恋。


たった1%も伝えきれなかった言葉たち。


満たされることなく終わった胸の中の想い。