「俺も信じるぜ!!」
「俺も。」
それから、平助や原田と
次々に声が上がった。
「俺も信じてやる。
それに....蛍の力は気持ち悪くないだろ。
お前はその力を人のために使えばいい。』
土方にそう言われて
涙が出そうになった。
そんなこと言われたこと...なかった。
いつも皆離れて行ったんだ...
仲良くなった看護師も、
お見舞いに来た樹の友達も
病院で会った子達も...
こんなこと言われたことなかったの....
『....,ありがとう...ありがとう..』
溢れる涙をこらえて
そっと微笑んだ。
それから数日
屯所内での蛍の仕事は食事係り
になった。
蛍は病気の事は打ち明けないまま
新撰組に馴染んできた。
そんなある日、
沖田が部屋に来た。
「蛍~! たまには外に出ませんか?」
沖田が言うのも無理がない
蛍は 服を買いに外に出てから
一度も外に出ていないのだ。
『...いゃ...私は やる事があるから...』
本当は やる事なんて無い...
暇でしょうがない。
でも ダメなんだ...体調が悪い...
最近 病気の発作が多いんだ。
「蛍?」
『沖田さん...けほっ..げほっ...はぁ
稽古はどうしたんですか?』
壁にもたれながら沖田に聞く。
「稽古は抜けて来ちゃいました!
蛍、 大丈夫ですか? 」
『大丈夫...ちょっと風邪ひいたかも...』
「そうですか...」
きっと嘘をついてるの
分かっているんだろう...
沖田の笑顔が怖い。
『....沖田さん、 ちょっと話ましょうか。』
沖田には隠し事
できないな...
「んー じゃあ夜でもいいですか?
そろそろ戻らないと 土方さんに
殺されちゃいます」
沖田は笑顔で言うと走って行った。
........
『土方.. ちょっと外に行って来る』
「おぅ。 あー 風邪ひくなよ...」
土方に一言 いって 縁側に出ると
沖田が座っていた。
「蛍!」
此処に座って下さい!
と沖田は自分の隣をトントン
とたたいた。
私は そこに座り話出した。
『沖田さんには隠し事できないね...
本当は風邪じゃないって
気付いてるんでしょ?』
「あははっ! そうですね」
じゃあしょうがない...
『....私、
生まれつき心臓の病気なんです...。
いつ死ぬかわからない...
分かっているのは 生きられても
二十歳が限界ってこと..
私....今 十七歳なんですよ..
だから、あと三年...。
生きられてもあと三年しかない....。』
蛍は ふと月を見上げた。
「そ..,ですか...」
すると隣からかすれた声が聞こえた。
「..怖いですか?」
質問されるとは思わなかったため
戸惑ったが 答えた。
『怖いですよ...』
私に 明日があるという 保証は無い。
だけど...
『だからこそ私は 笑っていたい。
明日が来ないかもしれないけど
今は 笑っていよう
明日が来ないかもしれない。 だから
今を精一杯生きるって決めたから。』
『私、本当はずっと死にたかった...
此処に来るまでは...
生きていてなんの意味があるんだろう
って思ってた。
人の傷を癒す事で 生きる意味を
確かめてた。
そうする事でしか
私は自分の存在価値を確かめることが
できなかったの...
私ね、 幼い頃は"絶対に治るよ"という
両親の言葉を信じて どんなに苦しい
治療も頑張った。
だけど ある時 私は
治療の最中に医者の心を聴いてしまった。
ーどうせ治らないのに可哀相に...ー
絶望的だった。
今までなんの為に あんな苦しい
治療を続けてきたんだろう...
外にも出してもらえないで
ずっと寝てるだけで
どうせ治らないなら 私は
治療なんかしないで自由でいたかった
その日から何もかもが嫌になった。
両親の嘘も 同情する心の声も
それを聴いてしまう私自身も。
だから私、発作が起こる度に
あぁ やっと死ねる
って思ったの。
でもね、私。 此処に来て
新撰組の皆に会えて
生きたい って思ったの。』
そう言って蛍は
ニコりと笑顔を向けた。
「...話してくれてありがとう。
そろそろ戻りましょうか。 風邪を引きます」
部屋に入ると 土方が申し訳なさそうな
顔で座っていた。
「...あ~ あの..聞くつもりじゃなかったんだが...
その...悪かった。」
あ...さっきの話聞いてたのか...
まぁ部屋の前で話出したたしな..
『大丈夫ですよ。』
蛍は笑顔を向ける。
「...泣け..辛いのに笑うな..
誰も見てないから..
もう頑張らなくていい...。.」
土方は蛍をそっと抱きしめた。
『.....っ...』
あんな優しく言うなんて
反則だ...。泣くに決まってる...
蛍は土方の腕の中で
静かに泣いた。