「……ですよね」


話を聞けば、彼が私をずっと観察していて、司さんとのことを美咲と話していることや、土曜日にそわそわしているのを知ってることくらい、想像がつく。


「話しがあるって言われたとき、きっとその好きな人のことについてだろうとは予想していました。雛子さんがその人を見るときの仕草や表情は、完全に恋愛をしているときのものでしたから」


「ただオロオロしているような仕草が、ですか?」


「怖いから、ですよね。そうなるのは」


彼の言葉には、妙な説得力があった。現在初恋をしている彼の言葉だからこそ、かもしれない。


「嫌われたくないとか、相手はどう思ってるんだろうとか。心が落ち着くより先に、考えすぎて身体がおかしくなる」


「ですね」


司さんへの想いと重ねながら、私は大仰にうなずいた。


「ふたりで出かけたときに思いました。あなたは、ぼくの前ではやけに自然に話してくれたし、その彼のときみたいに、不自然な仕草をしてなかった。だから、雛子さんが恋しているのは、ぼくじゃなくてその人なんだなって」


「市村さん……」


彼は、私が司さんに気持ちを寄せていると知っていて、誘ってきたのだろう。


たまたまじゃなくて、あえて。


私の仕草や表情が、司さんのときのそれと同じかどうか、自分の目で直接たしかめるために。


「雛子さん」


「はい?」


「今からする告白に、答えてください」


ハッとして彼を見ると、何かを決心したかのような真剣な表情をしていた。


「なん、でしょうか……」


圧倒される雰囲気に、思わず固唾をのむ。