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月曜日から、私は海外渡航についていろいろと調べ始めた。
「ど」がつく田舎者の私が唯一行ったことのある外国といえば。
大学の卒業旅行として、団体で行ったシンガポールだけ。
上半身がライオンで下半身が魚の彫刻に心奪われた記憶も、今は遠き思い出でしかない。
というわけで。
おかげでパスポートだけは持っていたけれど、飛行機の乗り方すらままならない、まったくゼロの状態だった。
幸い、決意をくんでくれた博美さんが海外については熟知していたので、懇切丁寧に教えてくれた。
「行ってないのは、南極大陸と沖縄ぐらいね。最南端って場所には、なぜだか縁遠いの」
この言葉に、私は何度、頼もしさを拝みたくなったか。
「シャンゼリゼ通りにお店あるみたいだけど、あの周辺のホテルは高すぎるのよ。学生がよくいる通りに、もっと安く泊まれるホテルあるから、予約しといてあげるわ」
パリにも二度行ったことがあるという博美さん。
サイトで、てきぱきと宿泊の予約をし、航空券まで手配してくれた。
一方、大学時代にフランス語を専攻していたという美咲には、向こうで使える言葉を学んだ。
「真面目に授業を受けてないから。俄仕込みね」
という、保証外履修だったけど。
ともかく。
彼女にもまた、拝みたくなる心境だった。