どこか希望の匂いがする言葉に、萎れた心の茎がその背筋をグッと伸ばす。
『彼が向かったお店の場所よ』
「どこ?」
たずねたのは、まさに反射的だった。
くじけた想い、かすかな希望、そして絶望。
ここ何時間かで経験した激しい浮き沈みが私を強くしたのかは定かではないけれど。
何か、覚悟のようなものが根をはったのは確か。
――どうしても会いたい。
例え、玉砕の確率を多分にはらんでいても。
気持ちを伝えたい、片想いに決着をつけたいという気持ちが、やっと揺るぎないものになった。
いったん流れたらとまらない涙と同じ。
長年の想いが溢れたら、そう簡単には止まらない。
10年もの間ずっとホバリングしていた恋は、やっと動き始めたんだから。
『――ってところ。でもどうする?彼の住所じゃないから、エアメール出してもお店に届いちゃうよ?』
「ねえ美咲」
「うん?」
「お願いがあるんだけど」
『お願いって?』
カツカツのローテーションで悪いけど、と前口上をしてから、私は彼女に頼み事をした。
人生でも進学と就職だけという、片手で足りる程度しかしていない、けれど今日二度目の岐路選択。
「来週か再来週、4、5日ほど、休ませて!!」