さらに強く、抱き締める。
 千秋を全身で感じる。
 受け止めるんだ――。

「殺せ」

『――え??』

「俺を……殺せよ……」

 俺は千秋から少し離れ、千秋の爪の先を心臓に当てた。

『やっ――!!』

「お願いだ……俺はいいから……千秋……」

 かっこよさげな事言って、本当は爪を持つ手が震えてる俺。
 冷や汗が顔を伝う。

『そんな事出来る訳無い……』

 千秋は震えながら首を振った。

『椿を殺すなんて――自分が消えるより怖いよ……』

 千秋は、そう泣きながら言うんだ。
 泣かないで欲しいのに……。

「俺も、千秋が苦しんでる顔見るのは……自分が死ぬより辛いんだ」

 俺はそう言って、千秋を促す。

「このまま手を前に出すだけでいいからさ、殺していいから……早く……」

 早くしないと、どんどん死にたくなくなってしまうから。
 この世に未練を感じてしまうから。



 千秋は、何かを決意したかのように唇をきゅっと結んだ。

『分かった…………』