俺は、人気の無い所を選んで走っていた。

 やっぱさ……人が居ると何かと不便だし。


「はあっはぁ……は……」

 大分息が上がってきた――――その時!!


 スパッ


 何かが切れた音。
 と同時に、左足に激痛を感じた。

「!!?」

 思わず膝を付く。
 幸い、辺りに人は居ない。

 ふくらはぎに、一本の赤い線が入っていた。
 その赤い線がどんどん太くなっていき、たらりと流れる。

 血だ……。
 俺は自分のふくらはぎからどんどん流れる血に、恐怖心を抱いた。

 何だこれ……血が止まらない。 痛い。血が。止まらない。痛い。止まらない。血。

『椿の負けだね……』

 声がして、俺ははっと後ろを振り返る。

「千秋……」

 千秋が冷ややかに立っていた。

『何よその目……椿なんかっ……椿なんか!!』

 千秋の目が一瞬光ったかと思えば、俺の首目がけて長い爪が飛んできた。

「うおわっ!!」

 俺は間一髪で後ろに避けた。

『避けないでよ!! もう嫌!! 早く――早く死んでよ!!!』

 千秋が叫びながら俺にどんどん爪を向けてくる。
 俺は必死に後退りしながら攻撃を避ける。

 なあ千秋……。
 俺達、もう戻れないのか?
 楽しかった、幸せだったあの頃に。