『軽い熱中症かなぁ? まぁちょっと寝てれば治ると思うよ〜』

 そう言いながら濡れたハンカチを俺の額に乗せてくれた。

 ひやっとして、気持ち良い。

 ちょっとビショビショ過ぎるけど……。


「あ、ありがとうございます」

 何か俺、知らない人に看病してもらってる。

『もしかして僕って怪しい人かな〜?』

 冗談混じりに男が言った。

「いやー、あの……その〜」

 俺は言葉に詰まる。

 怪しい、と言えば怪しいし……。

『――ああ!! お互い名乗るのを忘れてたね』

 え、名乗らなきゃならないの?

『僕は〜……』


『アン〇ンマン』

「は?」


『ドラ〇もん』

「はあ?」


『まあそんな感じ』

「どんな感じですか……」

 何なんだろうこの人。
 でも少し楽になったかも。


 って言うか……

 鬼ごっこの途中だった!!

「あのすみません! 俺ちょっと行かなきゃならないんで!!」

 俺は慌ててベンチから起き上がった。

『ふぇ?』

「本当にありがとうございました!! ではっ!」

 俺は急いで家と反対の方向へ走っていった。