教室の前まで着いた。

 ……おかしい。

 結局1時間目が始まる時間には間に合わなかったので、今は授業中の筈だ。
 その割には、教室からは喋り声が。

 不思議に思いながらも、俺は教室のドアを開けた。

『あっ! 椿!!』

『グッモーニン!!』

『遅刻だよ』

 んー?
 あれ?
 何このフレンドリーな雰囲気は。
 授業中、ですよね?

『数学自習になったんだよ』

 冷めた目でそう言ったのは、斉藤慎。

 ……なぁんだ。
 走って損した。

『ラッキーだったな友よ!!』

 そう言いながらバシバシと俺の背中を叩くのは早坂京介。

『おはよっ』

「おはよ、千秋」

 そしてこれが……俺の、彼女。
 栗山千秋。

 2年前からラブラブでっせ!!

 おっと、調子に乗り過ぎた。

 俺は他のクラスメイトに適当な挨拶をしながら席に着いた。
 (ほとんど置き勉してるけど)教科書を机の中に入れ、リュックをしまった。