『――話す事はこのくらいだ』

「唐松さん……ありがとうございました」

 俺は立ち上がって軽く頭を下げた。

『直樹』

「えっ?」

『“唐松さん”じゃなくて“直樹さん”でいい』

「はい!!」

 唐ま――じゃなくて直樹さんは照れ臭そうに笑った。

『じゃあそろそろ帰るね』

 葛西がそう言って立ち上がった。

『ええ〜!! 真奈美もう帰んのか!? 泊まってけよお』

 直樹さん……。

『行こ、皆』

 葛西は直樹さんを完全に無視して俺達に笑顔を向けた。

『がびーん……』

 普通がびーんって口で言わないし……。

「えっと、おじゃましました!」

『おじゃましましたー』

『おじゃましましたっ!』

 俺と千秋と慎が言った。

『うんうん! また来てねえ』

 靖奈さんが笑顔で手を振った。
 直樹さんは、まだがびーんの表情のままだ。
 そんな直樹さんに軽く会釈をして、俺達は家に帰っていった。