俺の願いは叶わなかった。

『おはよう』

 教室でそう話し掛けてきたのは慎と千秋……だけ。
 変なテンションで朝っぱらから大声出してくる京介は居なかった。

「京介は……?」

 僅かな望みを懸けて、俺は聞いた。

『……来てない』

 千秋の言葉で、俺の望みは無くなった。

 でも、もしかしたら……遅刻してくるのかも。
 そんな淡い期待をよそに、登校完了のチャイムが鳴った。

『やべ!! 遅刻遅刻〜』

 そんな声が聞こえて、俺は思わずドアの方を見る。

 …………京介じゃなかった。

 俺はこんなに、京介が来るのを期待している。

『どした〜?』

 遅刻してきたクラスメイトが、俺の目線を感じたのかそう言った。

「いや、何でも無い」

『分かった! 早坂が来てないから心配なんだろ?』

 直球だな。

「鋭いな、宮下……」

『まあ元気だせ!! 笑う門には福くるぞ☆』

「さんきゅー」

 そう言って俺は笑った。

『そうそうその笑顔だ!! じゃな!』

 宮下はそう言って俺の肩を叩き、自分の席に戻って行った。