真昼、青空に響き渡る彼女の声は春の和かさとはあまりにもかけ離れていた。

『助っ……助け……うぁ』

 彼女は通行人に助けを求める。
 彼女は懇願するが、混乱している彼女しか見えない通行人は怪訝そうな顔をする。
 そう、彼女の背後に迫る“鬼”は見えないのだ。

『いやっ……た……捕まっ――――!!!』

 通行人の腕を掴み、必死で叫ぶ彼女の背後には鬼が

『捕まえた〜』

 含み笑いをしながら鋭い爪のある両手を上に上げた。

『助けっ――!! 嫌死にたっ……くな……』

 それらは彼女の頭と背中に向かって勢い良く振り落とされた。

『いやあああぁぁぁぁぁ!!!!』

 彼女の体中から血が吹き出したかと思えば、すぐに彼女は――消えてなくなってしまった。

 通行人はその瞬間、声を聞いた。


『次は貴方が鬼ですよ』