18.44メートルのレビュー一覧
18.44メートルの距離。その空間には、様々な思いや感情が込められている。 幼き日からの思い出…悔しくて泣いた日もあれば、試合に勝って笑顔のこぼれた日もある。 意志疎通だけで言葉を交わすバッテリーの姿。今、18.44メートル向こうから、親友が絆や友情を込めた白球を放つ…。 読了後に瞼を閉じると、そのキラキラと光り輝いている二人の姿が思い浮かぶ、爽やかな物語です。
僕は遠いあの日を思い出した。 好きだったからなのか…。 僕はあの最後の試合の悔しさしか 覚えていなかったかもしれない。 好きだから 悔しかったんだ。 好きだから 泣けてきたんだ。 遠いあの日を思い出した。 僕は今もまだ あの日のように白い球を追いかけている。
18.44メートル。 この距離に立つとき、彼らは世界一の理解者同士になる。 何かを好きだという気持ちは誰もが持っていると思う。 しかし、自分ではその気持ちを持ち続けていると思っていても、いつかどこかで忘れてしまっていたりする。 白球は語りかける。 野球は好きか? 忘れることのない、過去の記憶が目の前の白球と重なる。 少年は気づく。 あぁ、俺は野球が大好きだ。 忘れていたことを思い起こさせてくれる、心が洗われる作品です。 あの時の純粋な気持ちを思い出したい! 今のこの大好きだという気持ちを忘れたくない! そんな人たちに読んでもらいたい作品です。
向き不向きという言葉があります。 壁にぶち当たったり、他の人と自分を比べて劣っていると感じるとき、考えてしまうことです。 でも、神様に好かれる人には好かれる理由があり、自分に足りないのは何かと考えてみよう。 それがわかった時、ボールからの声が聞こえてくるはず…。 好きなものだから頑張れるんだ。 例えうまく行かなくても、誰かより劣っていても、自分がこれを好きな気持ちは誰にも負けないんだ! と、声を大にして言いたくなっちゃいます。 短編ながら、しっかりと心に残る素敵な作品です。
タイトルに刻まれた距離。 それは、色褪せる事のない想いの距離。 「なぁ、聞こえへん?」 耳元で囁くような、うっとりとする言葉のやりとり、舞い落ちる情景。 胸を締め付けられる程の強い余韻と清涼感。 読めばわかる。 14.88メートル。 駆け抜けました。
晃平はきっと、野球の神様に好かれている数少ない者の一人。 そして俺は、野球を選んだ、数多くの者の一人。 目指すものに手が届かない辛さ、焦燥感。 それを楽々と手に入れているように見える相手に沸き上がる嫉妬。 思いが真剣であれば、誰もが必ず突き当たる苦しい壁があります。 けれど、自分の心に素直に向き合ったとき、新しい道はきっと開ける―。 そう教えてもらったようでした。 作者の柔らかな心と素直な気持ちが産んだ、美しい結晶のような物語です。 優しい手でそっと触れてもらったようで胸がいっぱいになり、自然と泣いていました。 迷ったとき、落ち込んだとき。 ぜひ読んでいただきたい珠玉の作品です。