梨花さんは私がお客さんと店を出る時、

お客さんからは見えないように

《ゴメンね》って両手を顔の前で会わせた。


私は小さく首を横に振った。


梨花さんは私が気を利かしたと思ったみたいだったけど、


本当はどうしようもない不安で一人でマンションに帰りたくなかったからだった。



お客さんと一緒に小さなバーへ行った。


『愛美ちゃんが誘ってくれるなんて嬉しいなぁ〜これからは愛美ちゃん指名で店に行ってもいい?』


『あっ…はい、ありがとうございます』


お客さんの言葉も全然耳に入らなかった。



(圭輔、全然メールも電話もくれないな…)