「っはあ…!」


ピピピピピ…

携帯のアラームが
午前6時30分になったことを告げる。


また、あの夢だ…。
あれからもう 半年は経っているのに。


何で、消えてくれないの―…。

無意識に溢れ出ていた涙を
指先で強引に拭う。

コンコン…

「…亜樹?
 起きてるの?」


控えめなドアのノック音と共に
お母さんの小さな声が聞こえた。


「今起きたよ。」

「そう…
 今日から新しい学校だからね?」

「うん、分かってるよ。」

「それなら いいんだけど。
 あ、朝ご飯出来てるからね。」

「はーい…」



お母さんは始終穏やかな表情をしていたけど、
最後に一瞬 苦しそうに目を伏せた。


いつもそうだ。
お母さんは 何を話していても
最後にはいつも苦しそうな顔をする。

そう、あの日からずっと。



「はあ…」

お母さんがキッチンへ戻って行ったのを確認すると、
私は静かにため息をついた。


あんな顔、させたくないのに…。
いつも私は何もかも上手くいかない。



せめて、これからはお母さんを安心させたい。
だから、だから―


新しい学校では、
笑顔で過ごせる充実した毎日を送らなくちゃ。