微睡みの中、海恋は懐かしくも幸せな情景を見ていた。何処かわからない場所、見知らぬ人達、そして幼い自分。不思議と不安や悲しい気持ちが存在しなくなり、温かく優しい気持ちになれた。
それに、孤独はなかった。
知らない人はいるけれど、仲良く話している自分がいた。
居心地がよく、ずっと一緒にいたい気持ちになり始めていた。
けれど、あくまでもそれは夢でしか無かった。
ゆっくりと開かれた瞼から入る光は、寂しい気持ちにさせる橙色だった。部屋の薄暗い空間を染め上げている。
目が覚めなければ悲しい想いをしなくてすむのに。
彼女が起きて最初に思ったのはこうだった。
横向きの態勢で膝を抱えたままの彼女は、悲しいよりも寂しいと感じていた。
夢を観たからなのかはわからない。でも、無関係とはいえない。 亡くなった人が隣にいなくて寂しいのか、それともさっきまでの夢がそうさせているのか。
彼女にはわからない。
けれど、そして何より、克明に覚えている夢が不思議でならなかった。でも、その場所は海恋の記憶には存在しない。
一体どういうことなのだろうと、妙に意識して彼女は思った。
少し身体を動かすと、不意にカタッと床に何か落ちる音が鳴った。
重い身体を起き上がらせて海恋は落ちた物を見た。
「カセット……テープ……」
少し擦れた声で落ちた物を見て海恋はそう呟いた。
寝ていた時にはだけたセーラー服を直さないでそれを手に取った。
「……あっ!」
手に取ったカセットテープを眺めていた海恋は思い出したように声を上げた。
そういえば葬式の日に晴司のお母さんから……
家に帰ってすぐにベッドに倒れこんだときの拍子にカセットテープが、何処かに隠れて、今のいままで目にするまで海恋は忘れてしまっていた。
少し覚めきらなかった海恋の頭がそのカセットテープを目にして思い出した瞬間、覚醒してけだい身体も吹き飛ぶくらいだ。
くしゃくしゃになっている髪の毛を直さずに海恋は直ぐさまベッドから立ち上がって、急いで階下へと降りていった。
それに、孤独はなかった。
知らない人はいるけれど、仲良く話している自分がいた。
居心地がよく、ずっと一緒にいたい気持ちになり始めていた。
けれど、あくまでもそれは夢でしか無かった。
ゆっくりと開かれた瞼から入る光は、寂しい気持ちにさせる橙色だった。部屋の薄暗い空間を染め上げている。
目が覚めなければ悲しい想いをしなくてすむのに。
彼女が起きて最初に思ったのはこうだった。
横向きの態勢で膝を抱えたままの彼女は、悲しいよりも寂しいと感じていた。
夢を観たからなのかはわからない。でも、無関係とはいえない。 亡くなった人が隣にいなくて寂しいのか、それともさっきまでの夢がそうさせているのか。
彼女にはわからない。
けれど、そして何より、克明に覚えている夢が不思議でならなかった。でも、その場所は海恋の記憶には存在しない。
一体どういうことなのだろうと、妙に意識して彼女は思った。
少し身体を動かすと、不意にカタッと床に何か落ちる音が鳴った。
重い身体を起き上がらせて海恋は落ちた物を見た。
「カセット……テープ……」
少し擦れた声で落ちた物を見て海恋はそう呟いた。
寝ていた時にはだけたセーラー服を直さないでそれを手に取った。
「……あっ!」
手に取ったカセットテープを眺めていた海恋は思い出したように声を上げた。
そういえば葬式の日に晴司のお母さんから……
家に帰ってすぐにベッドに倒れこんだときの拍子にカセットテープが、何処かに隠れて、今のいままで目にするまで海恋は忘れてしまっていた。
少し覚めきらなかった海恋の頭がそのカセットテープを目にして思い出した瞬間、覚醒してけだい身体も吹き飛ぶくらいだ。
くしゃくしゃになっている髪の毛を直さずに海恋は直ぐさまベッドから立ち上がって、急いで階下へと降りていった。