「今まで好きになった人も散々。
みーんな顔だけはいいんだけど中身は空っぽなの。」
そう言って
私は近くにいた店員さんに芋焼酎水割りのおかわりを注文する。
近くにあったハマチの刺身を頬張りながら
「バカでしょ?
見る目なさ過ぎて笑えるでしょ??」
そう自嘲気味に微笑むと
「全然。
なんにもおかしくないよ。
だって…今、優希は俺の側にいてくれてるじゃないか。」
レンは机の上においていた私の左手をギュッと掴んで
まっすぐに私の顔を見つめながらこう言った。
「俺に出会う前の優希は知らない。
どんなに嫌なオンナだったのかなんて、俺は知らない。」
「レン…」
「でもね?
今、俺の目の前にいる優希はすごくすごくいい女だよ。」
オジサンたちの下品な笑い声に
頭上に聞こえる山手線の電車の音。
ここにはロマンチックな夜景なんてどこにもないし
うっとりするような、高価な飲み物も食べ物も何もない。
だけど……
私にとっては、最高の舞台だった。