「わ、悪い、優希。
俺、思わず頭に血が上っちゃって……」
少し咳き込む私の背中をさすりながら、レンは申し訳なさそうに私に謝る。
変なレン
どう考えたって悪いのは私なのに。
そんな優しくて
カワイイ
レンのしぐさにクスっと笑って
「どうしてレンが謝るの??
悪いのは全部私…、でしょ??」
そう彼を見つめると
「やっぱり…ズルイ。
優希はズルイ。」
そう言って
レンはフイっと私から視線をそらす。
「俺のコトなんて好きでも何でもないくせに、そうやって思わせぶりな態度を見せる。俺がどんなキモチでこの2週間を過ごしたかなんて何にも知らないくせに、そうやって俺の心をかき乱す。
優希は……ズルイ。」
「レン……」
「俺、優希と初めてデートした時、やっと理想のオンナに出逢えたと思った。俺の外見や肩書きじゃなく、俺の中身を見ようとしてくれる人にやっと出会えたと思った。」
よれよれのネルシャツに
ケミカルウォッシュのジーンズ
見るからにキモオタのレンとの最初で最後のデート
もの珍しそうな好奇の目と
自然体で飾らないレン
ガード下にある飲み屋に
飾らない彼に惹かれていった自分
それらを思い出すと
胸の奥がキュウっと痛む。
「嬉しかったよ。
外見なんて気にせずに、笑顔で接してくれた優希は、可愛くて、魅力的で、バカな俺はどんどん夢中になっていってた。
キミとのメールも楽しくて、嬉しかった。
だから…キミと理子が親友だと知って、もっともっと嬉しかったよ。」
そう言って
レンは淋しそうにフフッと笑う。