それは、いつもと変わらない夜だった。 漆黒の空に浮かぶ星。 煌びやかに光っているわけではなく、控えめなそれはとても穏やかな世界をつくり出していて。 十分過ぎるほど綺麗な夜は、"私"というちっぽけな存在を急速に見失わせた。 「…苦しい」 そう呟いたのと同時に、涙が頬をつたってポツリ、またポツリとシーツに不規則な跡をつける。 真っ暗な部屋に差し込む優しい月明かりが、残酷にも私の姿を照らし出していた。