彼が恨めしそうに言ったあと、二人同時に噴きだした。

「俺ら、二人してアホっぽいよなあ」

「ほんとだね」


ひとしきり笑った後、私はぽつりとつぶやいた。

「……もう、朝の電車で会えないんだね」

仕方がないのは分かっているけど、やっぱり寂しい。


「うん。でもさ、これからは電車以外で会えばいいじゃん。こんな風に」

彼が繋いだままの手を持ち上げ、ニッと笑った。


私が一番好きな彼の笑顔。

私は彼の笑顔にドキドキしながら頷いた。



彼が繋いでいない方の手で、頭をがしがし掻きながら口を開いた。


「えーっと……名前、教えて?」



-- End --