私は心を鬼にして、再び目を閉じようとする彼の肩を揺らした。

「寝ちゃだめだって。お・は・よ・う!もうM高前だよ。降りないと!」


私の声と上半身の揺れに反応した彼は、今度はぱっちりと目を開いた。

そして少し低めの声で「おはよ」と言うと、長椅子から立ち上がった。


いつものように背の高い彼が、背の低い私の頭の上に手を置き、ポンポンと軽くたたいた。

「今日もありがと。明日もよろしくな!」

「うん。また明日ね」


私がそう言って小さく手を振ると、彼はニッと笑って電車から降りて行った。


彼と同じ制服の男子高校生たちが降りると、車内はガラガラになった。