幻でも見ているような気持ちになり、思わず彼を凝視すると目が合って、私は慌てて俯いた。

そんな私に、彼は構わず話しかけてきた。

「話したいことがあるんだけど」


私が言葉に詰まって黙り込んでいると、あっちゃんが私の耳元でささやいた。

「ね、あの人が電車の彼?」


私がこっくり頷くと、スズとあっちゃんが目と目で何か会話を交わし、ニタリと笑った。

「あたしたち先に帰るね」

あっちゃんが言った。


「ちょ……待って。パスタで打ち上げは?」

「そんな気分じゃなくなったから中止~」

いいだしっぺのスズが楽しそうに言うと、私の背中を彼の方にぐいぐい押し出した。


「ほら、行ってきなー」

「でも……」