「何?」

「……っと、ごめん。何でもない。えーっと……俺、こっからJRなんだ」

と言って、彼は改札の方を指した。


朝と同じように、彼は私の頭の上に軽く手を置いて笑った。

「いつもありがと。マジで。また明日な」

そう言って、彼の手が私から離れた。


あ、行っちゃう――…。

突然、私はどうしようもなく、彼と離れがたい気持ちになった。


こんな気持ちになったこと、今までなかったのに。


だけどこの気持ちをどうしていいのか分からず、私は、ごまかすように慌てて小さく手を振った。

それに応えて、彼は右手をひらひらさせながら、大股で改札の方に歩いて行った。