家が反対方向の私は、二人と改札で別れ、待たずにやってきた電車に乗った。

中途半端な時間だったので、車内は空いていた。


私は隅っこの空いてる席に座り、鞄から読みかけの文庫本を取り出した。

本を開いて文字を追い始めた途端、猛烈な睡魔が襲いかかってきて、同じ行を五回読んだところで読むことを諦めて目を閉じた。



「おい、起きろー」

近くで誰かの声が聞こえる。


「おーい、起きろってば」

今度はもう少し大きな声…。


――誰?


左の頬を軽くつねられた。

イタイ…。


夢にしてはリアルな感覚だなぁ……と、うすく目を開いた。